「有事」の値動きに影響、市場参加者の変化 | ゴールドマーケット解説 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア

先週(6月9日週)の状況:地政学リスクの高まりでNY金終値ベース最高値更新、JPX金はザラ場・終値ともに最高値更新

先週(6月9日週)のニューヨーク金先物価格(NY金)は、地政学リスクの高まりの中で週後半に水準を大きく切り上げた。広く報じられたように6月13日アジア時間午前にイスラエルがイラン国内に点在する核関連施設などを標的にした攻撃をしたと発表。両国の対立が中東地域での紛争拡大に発展するとの懸念が高まり、NY金は逃避資金を集め3営業日続伸した。

NYコメックスの通常取引は前日比50.40ドル高の3,452.80ドルで終了。週間ベースでも前週末比106.20ドル、3.17%高の続伸となった。週ベースのレンジは週末にかけ水準を切り上げたことで3,313~3,468ドルと155ドル幅に拡大した。

米中協議、米CPIと無風で通過

週前半は、6月9~10日とロンドンで開かれた2回目の米中関税協議の結果や、6月11日発表の5月米消費者物価指数(CPI)が注目を集める中で、NY金は3,350ドル前後での落ち着いた取引となっていた。

米中協議はもっぱら米国サイドの関心事であった中国からのレア・アース輸出につき一定の確認が取れたとして双方合意で終了。折に触れ協議は継続とされ無難に通過した。米5月のCPIは市場予想を下回り、FRB(米連邦準備制度理事会)が予想よりも早く利下げを再開するとの観測が強まり、NY金には一定のサポート要因となった。

事前に警告が発せられていた中東情勢

なおCPIが発表された6月11日は、トランプ米大統領が「中東は危険な場所になり得る」として、中東地域駐留の米軍関係者の家族などの撤収を示唆。米国務省もイラク大使館員の国外退去を認めるなど中東情勢の緊迫化が伝えられていた。

翌6月12日は米BBCニュースが「数日以内にイスラエルが米国の支援なしでイランを攻撃することを計画している」と報じたことから、同日NY金は3,402.40ドルと、5月6日以来の高値水準まで復帰していた。翌6月13日には前述のようにイスラエルの動きが伝えられた。

過去最高値を更新した国内金価格

NY金が週末にかけ急速に水準を切り上げたことから、国内金価格は過去最高値を更新することになった。米ドル/円相場はおおむね144円台で推移し、NY金の値動きに連動する形になった。

6月13日の大阪取引所の金先物価格(JPX金)は、一時1万5948円まで買われ、5月8日の1万5843円を上回り取引時間中の史上最高値を更新した。また終値も1万5887円と4月22日の1万5779円を上回り、最高値を更新した。

週足は前週末比207円3.17%高で続伸となった。レンジは1万5416~1万5948円で値幅は532円と3週間ぶりの大きさとなった。日本銀行は6月16日~17日の日程で金融政策決定会合を開く予定だが、国債買い入れの減額を進める中、金利を据え置く見通しとなっている。

各国中央銀行の外貨準備、ゴールドがユーロ抜き第2位

6月11日ECB(欧州中央銀行)が通貨の国際的地位に関する年次評価リポート(The international role of the euro)を発表した。その中で世界各国・地域の中央銀行の準備資産に占める金(ゴールド)の比率が、初めてユーロを抜いて第2位に浮上したと報告した。新興国中央銀行による記録的な購入と価格の大幅な上昇を背景に挙げている。

世界の外貨準備に占める金の割合は、市場価格ベースで2024年末時点に20%に達し、ユーロの16%を上回ったとしている。また米ドルの比率は46%で、緩やかな減少傾向が続いたという。

中央銀行など各国の公的機関は2022年以降過去3年間に、年間ベースで1,000トン余りの金(ゴールド)を購入している。これは2022 年より前の平均購入ペースの2 倍に当たる。これにより、各国の公的機関の金保有量は1970 年代以来の水準に回復したという。

伝統的なポートフォリオの見直し

トランプ関税の発表から発動延期と揺れ動いた4月から5月末にかけ、米金融市場では一時米株安、米ドル安、米国債安(利回り上昇)のトリプル安減少が見られた。とりわけ波乱市場の中で米国債が売られたことは、機関投資家から富裕層を中心とした個人投資家まで、相応の危機感を抱かせた表れとみられる。

特に株式の急落局面で米国債が安全資産としての機能を果たせず、価格が急落(利回りが急上昇)したことが転機になった。自由貿易の否定(関税発動)という通商政策の大転換こそあれ、金融危機など極度に緊張が高まったわけではない中でのことである。これは株式と債券に分散投資する伝統的な株式60%・債券40%という「60/40ポートフォリオ」が効かない環境に市場が変質したのではとの見方が高まっている。

米国株と米国債が互いに値動きを相殺するどころか、同じ方向に動くようになっている。これは政府債務と(利払い費増加などから)財政赤字がともに急拡大していることを受け、投資家が長期の米国債保有を敬遠していることが背景とされる。

こうした環境変化の中で金(ゴールド)と原油を組み入れることを推奨する動きが広がっている。ゴールドマン・サックス[GS]などが長期ポートフォリオとして勧めている。そうすることで、平均的年間リターンを維持しリスクを軽減できるという。金については通常よりも高めの配分を推奨し、原油は低めながらも組み入れるべきとしている。

ここ数年の金価格の高騰は中長期保有の現物需要増に支えられて来たが、この動きは米トリプル安をきっかけにさらに進展する気配だ。長期の現物買いといえば、新興国中央銀行の買いはその筆頭でもある。

今週(6月16日週)の見通し:金利見通しとパウエル発言、米小売売上高、中東情勢は原油輸送への影響、米国直接関与の有無に注目 NY金最高値更新か、JPX金1万6000円がコア

FOMC、市場の関心はメンバーの経済予測とドットプロット

今週(6月16日週)は6月17(火)~18日(水)の日程でFOMC(米連邦公開市場委員会)が予定されている。政策金利の据え置きが広く織り込まれており、市場の関心はメンバー全員による四半期ごとの経済予測とその予測分布図(ドットプロット)となっている。

前回3月の予測では、年内2回の利下げを予想していた。米トランプ政権による関税発動の影響がインフレ指標などに影響を与えるまでにラグがあるとされ、FRBは状況を注視するスタンスを続けている。今回も金利見通しに加えパウエル議長の記者会見に注目となる。

6月17日(火)発表の米5月の小売売上高にも注目したい。

「有事の金」の反応は限定的

一方、一気に流動化した中東情勢は、米国のサポートを受けたイスラエルが優位に進めているとの見方がある。イランの首都テヘランに至る制空権を支配したとイスラエルが発表したことなどが、判断の基となっているようだ。ただし、長期化するとの見方もあり予断を許さない。ホルムズ海峡など原油輸出ルートへの影響がどうなるか、また米国による直接的な関与の有無などが注目点になる。

不測の事態の発生も含め、現時点(日本時間16日午前)までで、いわゆる「有事の金」の反応は限定的なものになっている。それは短期筋のファンドによる積極的な買い攻勢という、かつてのパターンが見られないことによる。市場参加者の変化が値動きの変化に表れているとみられる。

NY金についてはテクニカル観点を含め4月22日の最高値3,509.90ドル突破の有無が注目される。今回のようなインパクトの強いイベントに対してどう反応するか。JPX金はNY金に連動する流れとなりそうだ。1万6000円を挟んだ上下300円のレンジを想定する。

内容は参考用であり、勧誘やオファーではありません。 投資、税務、または法律に関するアドバイスは提供されません。 リスク開示の詳細については、免責事項 を参照してください。
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