## 先週(6月9日週)の振り返り=中東リスクには最初円買いで反応も、その後は円売りに### 週前半の米中合意期待の米ドル高・円安も145円台で一巡先週の米ドル/円は、関税交渉での米中合意期待などから株高を手掛かりとした米ドル買いが先行しました。ただ、米ドル/円の上昇は145円台半ばで行き詰まり、過去1ヶ月近く続いている上値の分岐点である146円突破に至らなかったことから、週後半は下落に転じました。(図表1参照)。【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年4月~)出所:マネックストレーダーFX6月13日にイスラエルによるイランへの空爆が起こり、中東の地政学リスクへの懸念から株価が一時大きく下落すると、米ドル/円も売りで反応し、142円台まで下落する場面もありました。ただ、その後は米ドル高・円安が再燃しました。原油価格の急騰が、原油輸入依存度の高い日本において円売り材料となったこと、また原油高を通じたインフレ再燃への懸念から米金利が上昇したことが、米ドル買い材料となったためでしょう。### 長期金利差より短期金利差が手掛かりになりやすい米ドル/円新たに浮上したイスラエルとイランの軍事衝突リスクは、すでに述べたように原油高を通じた円売り材料であり、インフレ再燃懸念による米金利上昇に伴う米ドル買い材料、そして世界経済の不透明要因として株安材料と考えられます。では、さらに米ドル買い・円売りが拡大に向かうのでしょうか。今後の動向はインフレ再燃と景気先行き悪化見通しの中で、日米の金融政策がどのように反応するかが鍵となるでしょう。5月以降、米ドル/円は日米長期金利差(米ドル優位・円劣位)との関係が薄れました(図表2参照)。それは米金利上昇が景気回復を受けた「良い金利上昇」か、米財政赤字拡大を懸念した「悪い金利上昇」かの見分けが曖昧になっている影響もあるのではないでしょうか。【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年4月~)出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成そうした中では、金融政策を反映する短期金利の日米金利差の方が米ドル/円の行方を考える上で参考になりそうです(図表3参照)。日米の金融政策は、これまでは日銀が追加利上げ、一方FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げ再開を検討する状況との理解が基本であり、このため金利差は縮小する見通しと考えられてきました。それがこの中東の地政学リスクによって、どこまで変わる可能性があるかを見極めることになりそうです。【図表3】米ドル/円と日米2年債利回り差(2025年4月~)出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成## 今週(6月16日週)の注目点=中東情勢は日米の金融政策に影響するか### 日米のほか英国、スイス、新興国の金融政策発表も今週は日米などの金融政策発表が予定されています。今のところ、今回の会合での金融政策変更はないとみられていますが、今後は日銀が追加利上げ、一方FRBは利下げ再開という形で、日米で逆方向の金融政策変更が行われるとみられていました。それがイスラエルとイランの軍事衝突リスクなどを受けてどのように変わるのか、それとも変わらないのかを、今回の会合の結果や会合終了後の植田日銀総裁、パウエルFRB議長の記者会見などを受けて見極めることになりそうです。今週は、日米以外でも、英国、スイス、そしてブラジル、トルコといった新興国でも金融政策発表が予定されており、「中央銀行ウィーク」ともいえるでしょう。また、米経済指標発表では5月の小売売上高など景気指標の発表が多く予定されています。### 米ドル高・円安は限られるとの見方=今週(6月16日週)の予想レンジは142~146.5円米ドル/円は過去1ヶ月、142~146円中心の方向感の定まらない展開が続きました。先週(6月9日週)もそれなりに上下の動きはあったものの、結果的にはこの142~146円のレンジを抜けるには至りませんでした。そのため今週は、中東情勢や日米金融政策などを手掛かりに、この142~146円のレンジをどちらに抜けるかが焦点になるでしょう。基本的にはトランプ政権において、米利下げ再開、日銀の追加利上げを模索する流れが大きく変わることはないと考えられます。そうであれば、日米短期金利差を通じて米ドル高・円安は自ずと限られるとの見方は変わらないのではないでしょうか。以上を踏まえて、今週の米ドル/円は142~146.5円のレンジで予想したいと思います。
【為替】6/16-6/20の米ドル/円を予想する | 吉田恒の為替ウイークリー | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
先週(6月9日週)の振り返り=中東リスクには最初円買いで反応も、その後は円売りに
週前半の米中合意期待の米ドル高・円安も145円台で一巡
先週の米ドル/円は、関税交渉での米中合意期待などから株高を手掛かりとした米ドル買いが先行しました。ただ、米ドル/円の上昇は145円台半ばで行き詰まり、過去1ヶ月近く続いている上値の分岐点である146円突破に至らなかったことから、週後半は下落に転じました。(図表1参照)。
【図表1】米ドル/円の日足チャート(2025年4月~)
出所:マネックストレーダーFX
6月13日にイスラエルによるイランへの空爆が起こり、中東の地政学リスクへの懸念から株価が一時大きく下落すると、米ドル/円も売りで反応し、142円台まで下落する場面もありました。ただ、その後は米ドル高・円安が再燃しました。原油価格の急騰が、原油輸入依存度の高い日本において円売り材料となったこと、また原油高を通じたインフレ再燃への懸念から米金利が上昇したことが、米ドル買い材料となったためでしょう。
長期金利差より短期金利差が手掛かりになりやすい米ドル/円
新たに浮上したイスラエルとイランの軍事衝突リスクは、すでに述べたように原油高を通じた円売り材料であり、インフレ再燃懸念による米金利上昇に伴う米ドル買い材料、そして世界経済の不透明要因として株安材料と考えられます。では、さらに米ドル買い・円売りが拡大に向かうのでしょうか。今後の動向はインフレ再燃と景気先行き悪化見通しの中で、日米の金融政策がどのように反応するかが鍵となるでしょう。
5月以降、米ドル/円は日米長期金利差(米ドル優位・円劣位)との関係が薄れました(図表2参照)。それは米金利上昇が景気回復を受けた「良い金利上昇」か、米財政赤字拡大を懸念した「悪い金利上昇」かの見分けが曖昧になっている影響もあるのではないでしょうか。
【図表2】米ドル/円と日米10年債利回り差(2025年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
そうした中では、金融政策を反映する短期金利の日米金利差の方が米ドル/円の行方を考える上で参考になりそうです(図表3参照)。日米の金融政策は、これまでは日銀が追加利上げ、一方FRB(米連邦準備制度理事会)は利下げ再開を検討する状況との理解が基本であり、このため金利差は縮小する見通しと考えられてきました。それがこの中東の地政学リスクによって、どこまで変わる可能性があるかを見極めることになりそうです。
【図表3】米ドル/円と日米2年債利回り差(2025年4月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
今週(6月16日週)の注目点=中東情勢は日米の金融政策に影響するか
日米のほか英国、スイス、新興国の金融政策発表も
今週は日米などの金融政策発表が予定されています。今のところ、今回の会合での金融政策変更はないとみられていますが、今後は日銀が追加利上げ、一方FRBは利下げ再開という形で、日米で逆方向の金融政策変更が行われるとみられていました。
それがイスラエルとイランの軍事衝突リスクなどを受けてどのように変わるのか、それとも変わらないのかを、今回の会合の結果や会合終了後の植田日銀総裁、パウエルFRB議長の記者会見などを受けて見極めることになりそうです。
今週は、日米以外でも、英国、スイス、そしてブラジル、トルコといった新興国でも金融政策発表が予定されており、「中央銀行ウィーク」ともいえるでしょう。また、米経済指標発表では5月の小売売上高など景気指標の発表が多く予定されています。
米ドル高・円安は限られるとの見方=今週(6月16日週)の予想レンジは142~146.5円
米ドル/円は過去1ヶ月、142~146円中心の方向感の定まらない展開が続きました。先週(6月9日週)もそれなりに上下の動きはあったものの、結果的にはこの142~146円のレンジを抜けるには至りませんでした。そのため今週は、中東情勢や日米金融政策などを手掛かりに、この142~146円のレンジをどちらに抜けるかが焦点になるでしょう。
基本的にはトランプ政権において、米利下げ再開、日銀の追加利上げを模索する流れが大きく変わることはないと考えられます。そうであれば、日米短期金利差を通じて米ドル高・円安は自ずと限られるとの見方は変わらないのではないでしょうか。以上を踏まえて、今週の米ドル/円は142~146.5円のレンジで予想したいと思います。