2025年6月、改正資金決済法の成立により、「暗号資産仲介業」が新たに制度化されることとなった。本制度は、暗号資産交換業および電子決済手段等取引業と異なり、想定的に軽微な規制のもとで暗号資産の取扱いを可能にする枠組みである。具体的には、従来のように厳格な資本要件や内部管理体制を構築せずとも、仲介業者として登録することで、自社サービス内で暗号資産やステーブルコインを活用できるようになる。この動きは、2004年に金融商品仲介業が制度化された際の証券市場の変化とも重なる。かつて証券取引の仲介が解禁されたことで、銀行や保険会社、さらには通信キャリアなどの非金融事業者も相次いで参入し、投資商品の販売チャネルが一気に多様化した。実際、SBI証券と三井住友カード、三井住友銀行の連携によって開設された仲介口座は100万口座を超えており、結果として証券口座の普及に大きく寄与している。今回の暗号資産仲介業も、同様の変化をもたらす可能性が高い。すでに楽天グループ、LINE、メルカリなどは暗号資産との接点を持っており、本制度化に伴い、サービス内の資産運用や決済機能、ポイント機能との統合が進展することが見込まれる。加えて、これまで分断されていた証券会社と暗号資産取引所の連携が促進されることで、金融商品と暗号資産の垣根が次第に解消され、よりシームレスな取引体験が実現することも期待される。さらに、仲介業の導入によって、暗号資産に対応したIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)が増えることも予想される。IFAとは、特定の金融機関に属さず中立的な立場で金融商品の提案・販売を行うアドバイザーであり、金融商品仲介業が設立されて以降、証券分野で急速に広がった。近年、ビットコインをはじめとする暗号資産への関心が高まる中、IFAが仲介業として正式に暗号資産を取り扱えるようになれば、顧客のポートフォリオ全体における最適なアロケーション提案が可能となり、資産形成層の新たなニーズに応えることができるだろう。もっとも、仲介業者は投資家に新たな接点をもたらす一方で、販売適合性の確保やAML(アンチ・マネー・ロンダリング)/CFT(テロ資金供与対策)への対応といった、リスク管理体制の整備が求められることは言うまでもない。特に、知識や経験の浅い個人投資家を対象とした暗号資産の勧誘においては、法令遵守と適切な情報提供が不可欠となる。
暗号資産仲介業の新設で期待される投資家層の拡大 | 最新クリプト事情 | マネクリ マネックス証券の投資情報とお金に役立つメディア
2025年6月、改正資金決済法の成立により、「暗号資産仲介業」が新たに制度化されることとなった。本制度は、暗号資産交換業および電子決済手段等取引業と異なり、想定的に軽微な規制のもとで暗号資産の取扱いを可能にする枠組みである。具体的には、従来のように厳格な資本要件や内部管理体制を構築せずとも、仲介業者として登録することで、自社サービス内で暗号資産やステーブルコインを活用できるようになる。
この動きは、2004年に金融商品仲介業が制度化された際の証券市場の変化とも重なる。かつて証券取引の仲介が解禁されたことで、銀行や保険会社、さらには通信キャリアなどの非金融事業者も相次いで参入し、投資商品の販売チャネルが一気に多様化した。実際、SBI証券と三井住友カード、三井住友銀行の連携によって開設された仲介口座は100万口座を超えており、結果として証券口座の普及に大きく寄与している。
今回の暗号資産仲介業も、同様の変化をもたらす可能性が高い。すでに楽天グループ、LINE、メルカリなどは暗号資産との接点を持っており、本制度化に伴い、サービス内の資産運用や決済機能、ポイント機能との統合が進展することが見込まれる。加えて、これまで分断されていた証券会社と暗号資産取引所の連携が促進されることで、金融商品と暗号資産の垣根が次第に解消され、よりシームレスな取引体験が実現することも期待される。
さらに、仲介業の導入によって、暗号資産に対応したIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)が増えることも予想される。IFAとは、特定の金融機関に属さず中立的な立場で金融商品の提案・販売を行うアドバイザーであり、金融商品仲介業が設立されて以降、証券分野で急速に広がった。近年、ビットコインをはじめとする暗号資産への関心が高まる中、IFAが仲介業として正式に暗号資産を取り扱えるようになれば、顧客のポートフォリオ全体における最適なアロケーション提案が可能となり、資産形成層の新たなニーズに応えることができるだろう。
もっとも、仲介業者は投資家に新たな接点をもたらす一方で、販売適合性の確保やAML(アンチ・マネー・ロンダリング)/CFT(テロ資金供与対策)への対応といった、リスク管理体制の整備が求められることは言うまでもない。特に、知識や経験の浅い個人投資家を対象とした暗号資産の勧誘においては、法令遵守と適切な情報提供が不可欠となる。